『サイコだけど大丈夫』個人レポ

『サイコだけど大丈夫』のサムネイル(?)を最初見たときは狂人、非人道的なサイコパスがウヨウヨいて理解不能なサスペンスのようなものであると勝手に思っていて何が面白いのだろうと首を傾げてたのだった。しかし蓋を開けると全くそんなことはなく私が勝手に話の構成上サイコ側だと思っていたキム・スヒョンは全くサイコパスではなかった。

 

それはさておきこの話は童話作家コ・ムニョン(ソ・イェジ)と精神病院の保護士をしているムン・ガンテ(キム・スヒョン)、その兄で自閉症を持ったムン・サンテ(オ・ジョンセ)がそれぞれ抱えたトラウマを幼い頃に住んでいたソンジン市で癒していく、と言う話の構造としてはありがちとも言える話である。

 

いつもではあるがこのドラマを見た前提の個人レポであることをご理解いただきたい。戻るなら今である。

 

 

 

 

 

 

 

 

とりあえず魅力を四つにまとめてみる。

 

 

 ①作品の構成と美術

この作品ではムニョンとガンテの出会い、和解、恋、ムニョン母の罪による別れ、それを繋ぐサンテが描いたガンテの寝顔の絵、それぞれの人生と出会いをまとめたムニョンの童話『本当の顔を探して』と旅、兄の弟からの自立、というまとめてみるとわりかしありがちでドラマの定石とも言える流れであるがムニョンの童話、彼女自身の容貌の怪しさ、童話をモチーフにしたオープニング、各話の構成などにまず魅力にあって、それでいてそれぞれの感情描写が省かれていないところ、もつれた糸、関係を一つ一つ、少しずつ少しずつ解いていってしがらみから解放されて未来が明るくなっていく感じがとても好感があったのだと思う。

 

それぞれの人物の過去は劇的といえば劇的でもあるが言ってしまえばムニョンの母はいわゆる毒親で、ムン兄弟は家族だから、という理由だけで離れられない、という状況は身の回りにありふれていて、それに対する答え、最適解を見つけ出した三人はどこか羨ましく眩しい。また最後の童話は上手く童話的に暗示がまとまっていてただのノンフィクションになりきっていないところがとても良いと思った。

 

 

 

②登場人物への共感とどこか安心するフレーズ

 

個人的にこの作品中でいつも我慢を強いられてきたガンテに対してこのコロナ禍での強いられた我慢を連想せざるを得ない。それを強いられなくともガンテの兄のために生きてきた人生というのは悲哀を誘うものであるがこの経験によって感情移入が深まったように思われる。

 

また「OK精神病院(日本語訳)」の「大丈夫じゃなくても大丈夫」というスローガンは決して大丈夫ではなさそうな人々が入院しているのになぜか説得力があり、自身が大丈夫でも大丈夫じゃなくても「大丈夫」という気持ちになってくる。というより、韓国語の「ケンチャナ」という響き、意味がそう思わせるのかもしれない。

 

 

 

③恋愛について

 

彼らの恋だけに焦点を当ててみると、以前心理学で「恋とは自分と違うものを持った人に興味を持ち、その中で自分と似通ったものを感じて惹かれていく」と言ったことを聞きかじったことがあるがこれに全て当てはまる。ムニョンは感情をあらわにしていてわがままで、一方ガンテはいつも兄のために生き、いつも自分の感情をあらわにすることを我慢している。

 

しかし二人には母親に愛されなかったという記憶からの孤独感があり、それは二人の対照的な性格と、その中にある同じものでありこの法則に当てはまっている関係は心理学的にも立証されるものでありだからこそしっくりくるのではないかと思った。

 

 

 

童話作家コムニョンのビジュアル

ムニョンのビジュアルに焦点を置いてみると、ムニョンが母親の呪縛から逃れるために髪を切るシーンがあるがその前とあとでメイクが変化している。登場ではアイシャドウは濃いめ、リップの色は赤、その後はコーラルなどの肌馴染みのいいもので目に重点を置いたメイクであったが、髪を切った後はリップメイクに重点を置いてアイシャドウは控えめ、服の色も明るく少女的なものが多くなっている。その変化が美術で現れていて、そしてムニョンを演じるソ・イェジさんの大人びていてそれでいてどこか少女的なお顔立ちも相まって変化が明確に現れているのが素敵である。

 

余談であるがガンテ兄弟も最初の方はカーテンを閉め切った暗い部屋の描写が多いが暗鬱として気持ちが晴れるにつれ画面も明るくなっていく。

 

そう言った感情描写が明確で、それでいて自然で、と言った韓国ドラマの枠の長さを生かしたドラマであったように思う。

 

 ただ個人的に最後の大どんでん返し!!!と言った内容が少し苦手であった。少し設定も無理だったし。

しかし、それだけの執着、大人になったムニョンと母の対話がなされたことで物語のスピード感はアップし、感情としても視聴者が共感、飲み込める内容にはなったのではないかと思った。

 

 

 

 

 

話を追わなくてもソ・イェジさんが各話で繰り広げるファッションショーとも呼べる衣装の変化やセットの美しさ、怪しげなostだけでも見ていて楽しいものであると思う。おすすめである。